2011年5月1日日曜日

MAKING OF NOO ACT1



VACANTでの「ハラジュク・ニュートピア」への参加のお誘いがずいぶん前(3.11以前だからそう感じるのでしょうか?)にありました。その時はなんとなく、ものづくりのワークショップをやるというアイデアしかありませんでした。NOOという活動の意識もなく、なんとなくものづくりの楽しさを伝えられるワークショップにしたいという気持ちだけでした。



そして全く不意に3月11日の出来事が起こりました。


地震は大地だけではなく、僕のこころ、そして固まった考えや思い込みをも激しく揺さぶりました。そして地震によって引き起こされた福島の原発事故によって、それまで当たり前に使っていた電気というエネルギーが、実は大きな危険性をはらんでいてることを思い知らされました。それまでも原発のエネルギーということは知っていて、それに対して賛成していたわけではなかったのですが、何も言わず、行動せずに電気を使っていた自分にも責任がある、なんとも言えない気持ちに…


電気を使わない生活をいきなり始めるのは無理なのですが、出来るだけ自然にとっても、人間にとっても危険性の少ないエネルギーとして電気を使いたいと思いました。そして、たとえ電気がなくなったとしても意外と生きて行くことはできるんじゃないのかな、という気もしました。食べることや生活することは、かなり昔の生活パターンをお手本にすれば、なんとかなるんじゃないかな…


他に僕にとって生きて行くうえで大切なことは何があるか考えてみました。ものづくりに関しては、今までのようなスピードではつくれないかもしれないけど、手道具を使えばなんとかなりそうだし、意外と新しいものづくりができそうな気がしました。


僕にとって一番問題なのは、「音楽を聴く」ということなんじゃないかと思いました。もちろんライブ鑑賞はできるでしょうが、毎日気軽には聴くことはできません。自分で演奏できたらいいんでしょうが、どう考えてもかなり悲惨な結果しか想像できません。それに僕が愛する電子音やノイジーなギター音、打ち込みの音楽とかをアコースティックな環境で再現するのは無理難題です。


これはやっぱりレコードを電気なしで聴ける環境をつくるしかないなぁと思いました。ターンテーブルで廻っているアナログレコードの針の近くに耳を近づけたら小さな音だけど、音楽が鳴っていることは以前から知っていました。あの音をもう少し大きくすることができたら結構いけるかも、と思いました。CDとはお別れになるけど、仕方ないか。。。





蓄音機の使用も考えましたが、あれはSP盤用だし、78回転だからそのままは使えません。できるだけ身の回りの物を利用してそういう装置をつくりたいと思いました。蓄音機の知識もなく、イメージだけで衝動的に作ったのが上の画像です。使った材料は、紙風船、縫い針、厚紙、セロテープだけです。この装置をレコード盤にそっと載せて、手でレコードを回転させたら、、、意外とちゃんと音が鳴りました!小さい音だけど、僕の音楽鑑賞の欲求を満たしてくれるには十分な音でした。最初にターンテーブルに載せたのが、なぜかHIP HOPの12inchだったので、気がついたらビートに合わせて首を上下させている自分がそこにいました。



この装置を改良してワークショップにしたら面白いかもと思いました。このチープなビジュアルをできるだけオーディオマニアの心をくすぐるものに変えてみたいと思いました。この装置を見ていてイメージした「衛星」を意識して、まず紙風船をシルバーに塗装しました。カートリッジ部分を取り替えたらすぐにこの装置が使えるようにアルミ材を使ってオリジナルのパーツをつくりました。シルバーに統一された装置は、Bang&Olfsenには程遠い感じですが、それなりのプロダクト感を身に纏いました。(完成後の画像はまた今度お見せします。)


なんとなくこの装置に "SATELLITE OF LOVE" という名前を付けてみました。3.11以降の自分の気持ちが"SATELLITE OF LOVE" という言葉の響き、ルーリードの歌声、「宇宙」といったイメージとしっくりと同調したのです。


青柳亮(gm projects/NOO)